くるまのなかで

「え？」

答える準備って、どういう意味？

「梨乃の混乱が治まるまで、俺は自分の言いたいこと言っちゃダメだっていうから、俺からは勝手に喋れないけど」

あえて意地悪に返す奏太。

私の反応をおもしろがっているようにも見える。

「何よ、答える準備って。私、見たんだから」

「俺が由美といるところを？」

「えっ、なんで知ってるの？」

私の反応を見てクスッと笑いを漏らした奏太は、やっぱり私の反応をおもしろがっているらしい。

ますますわけがわからなくなって、イライラする。

「何日か前、清香がガチ切れして宇津木自動車に乗り込んできた」

「清香先輩？」

「そう。久しぶりに会ったっていうのに、第一声が“てめーどういうつもりだ！”で、胸ぐら掴まれるし、わけわかんなくて参った」

高校のときはガングロギャルだったけど、中学のときは喧嘩上等のヤンキーだった清香先輩の、怒ったときのすごい剣幕を思い出す。

「それは……ビックリするね」

「で、何とかなだめて話を聞くと、梨乃が俺と由美のことで落ち込んでるから、殴り込みにきた、と」

「殴り込みって……」

清香先輩、もう小学生のお子さんもいて立派にお母さんなのに、昔じゃあるまいし。

でも、私のために怒ってくれて嬉しい。