くるまのなかで
奏太に触れられるだけで、私はこうも簡単に腑抜けてしまうのか。
絶望とも思える強烈な甘い感覚に、私はその先を期待してしまう。
だけど彼の唇は、意外にもあっさり離れていった。
見つめ合うと切なさが増す。
明らかに熱を宿している彼の瞳が、しっかり私を映している。
私はいつの間にか奏太の腰に腕を回していた。
「上げちゃダメ……だったかな?」
「ダメだよ。危ないだろ」
「危ないって、どの辺が?」
「自惚れて、今すぐにこれ以上のこと、してしまいそう」
私を試すようにもう一度口づける。
付き合ってもいない人と、キスとか、それ以上のことをしちゃうなんて、いけないことだ。
そういう脆い綺麗事が、かろうじて私たちをとどまらせている。
……いや、そんなモラル、もうとっくに崩壊していたらしい。
私の身体はいけないと思う意思とは裏腹に、喜んで彼に応えている。
だって、私は。
やっぱりあなたにだったら何をされてもいいし、どこへ連れて行かれても構わない。
「もっと自惚れてよ」
「梨乃?」
「私が意地を張れなくなるくらい、がっついてよ……!」