くるまのなかで

「久しぶり。奏太によーく話は聞いてるけど、実際に会える日が来るなんて思わなかった」

当然ながら高校生の頃よりも少し老けた由美先輩が、相変わらずの美しい笑顔を向ける。

白のふわっとしたトップスの上に淡い黄色のサマーニットを羽織り、ボトムスはブルー系の花柄が印象的な、膝丈フレアスカート。

身なりもエレガントで、とても5歳の子供がいるようには見えない。

アウトレットにいたときのラフな格好もかわいかったが、仕事モードの彼女もとてもいい。

「呼んでくれれば、喜んで会いにいくのに。久しぶりに会えて嬉しいです」

少し前なら、心からそう言えただろう。

しかし奏太とのことを知っている今となっては社交辞令でしかない。

清香先輩は不安げに私たちの様子を見守っている。

休憩室にいる他の従業員は、特に私たちを気にしている様子もない。

私と由美先輩の間にバチッと音を立てて散った火花は、どうやらこのエリアにいる私たち三人にしか見えていないようだ。

見えてしまった私は認めねばならない。

彼女は今、私を好意的には見ていない。

「由美先輩は、どうしてここに? もしかして、うちのどこかの部署で勤めるんですか?」

「ううん。今週の土日にやるイベントのスタッフとして採用されたから、今日はその研修だったの」

短期バイトか。

普通のバイトに比べて少しキツいけれど給料の割がいいから、体力に自信がある人にはオススメだ。

「そうでしたか。よろしくお願いします」

それにしても清香先輩の表情が気になる。

もし単に再会を喜ぶ会話をしていたのであれば、こんなにカタい顔をしているはずがない。

「ねえ、コバリノ」

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