くるまのなかで
午後10時半。
私は自宅に到着するなり、急いで片付けに取りかかった。
私が仕事を終えて携帯を確認すると、約束通り由美先輩からメッセージが来ていた。
何度かやり取りをして、話し合いは私の部屋で行うことに。
車は先月のうちに奏太が借りた、近くの月極駐車場に停めてもらう。
奏太はここ最近、二日に一回はうちに来ているが、今日はカズくんと家でお留守番だ。
コーヒーを出すか紅茶を出すかで迷っていると、夜中にそぐわぬチャイムが鳴った。
由美先輩のご来訪である。
「お待ちしてました」
「お邪魔します。すっぴんでごめん。明日も早いから、先にカズとお風呂に入っちゃった」
夕方に見た仕事モードとは違うユルい服装だ。
スウェット素材のグレーのパンツに、黒のトップス。
手には財布と携帯が入るくらいの小振りなトートバッグ。
メイクなどしていなくても目元の印象が少し薄くなる程度で、彼女は十分美しい。
由美先輩は今も昔も目元を強調するようなメイクをしているが、こうしてすっぴんを見ると、案外甘い顔立ちをしているのがわかる。
つり目つり眉のシャープな顔立ちである私は、奏太が毎日彼女の顔を見ているのかと思ったら、やっぱり心配になった。
「女同士ですし、気にすることないですよ。どうぞ」
私は扉を広く開けて彼女を中へ招いた。