くるまのなかで
由美先輩のリクエストで、ドリンクは紅茶にした。
私はテーブルの90度横に座り、お互いに一口飲んで息をつく。
緊張しているのは由美先輩も同じであるようだ。
「何から話しましょうか」
私から声をかけると、彼女は静かにカップを置いた。
「懐かしい話も色々したいけど、今日は時間も遅いし、本題からでいいんじゃないかな」
「本題ですか」
それはつまり、奏太についてということだ。
「うん。隠したってしょうがないから本当のこと言うけど、あたし、奏太とコバリノのヨリが戻ったこと、喜べない」
ズン、と胸が鈍く痛んだ。
高校時代、奏太との関係を一番応援してくれていたのは由美先輩だったのに。
ケンカした時は率先して相談に乗ってくれた彼女に、こんなことを言われる日が来るなんて思ってもみなかった。
「それは、どういう意味で?」
「あたし、奏太と結婚するつもりでいたから」
「……は?」
声と同時に手も震えて、危うく熱々の紅茶が入ったカップをひっくり返してしまうところだった。
「奏太もそのつもりだったはずよ。一緒に暮らし始めた時、お互いに話してたの。“もしこのまま一緒に暮らして、お互いがその気になったら結婚しようか”って」
奏太が、本当に……?
私と再会する前のこととはいえ、ショックが大きい。
奏太が私以外の人と結婚を考えていたなんて。
鼻の奥がツンと痛むけど、泣いたりしちゃいけない。
清香先輩の言葉を思い出し、密かに深呼吸をして気持ちを落ち着ける。