くるまのなかで
『ケンカじゃなくても、ちゃんと戦わなきゃ』
私と由美先輩、両方の心配をしてくれている清香先輩の言葉が、何度も頭をよぎる。
戦わなくちゃ。
言いたくないことだってちゃんと言わないと、解決なんてしない。
「由美先輩、勝手です」
「勝手?」
「そんなの、奏太を金づるにしているようにしか聞こえない」
「かねっ……はぁ? あたしは……」
心外だというように目を見開き、身を乗り出す。
私は言い訳が始まる前に言葉を続けた。
「頭とか学歴とか、そんなの、今までそのための努力をしてこなかった自分のせいじゃないですか。離婚したのだって、自分の都合ですよね? 私と奏太には関係ありません。自活する力も頼る人もいないのに、子供を育てる力もないままどうして離婚なんてしたんですか。片親での生活がどれだけ大変なのか、先輩だって知ってたはずなのに」
私も彼女も、母子家庭育ちだ。
父親がいないことに対する不安や苦労を語り合ったことだってある。
「結婚も離婚もしたことないくせに、偉そうに言わないで」
「偉そうに言わないでほしいのは私の方です。自分に子供がいることを、奏太を得るための口実に使わないでください」