くるまのなかで

奏太と夜景と虫の鳴き声に癒されて、自分が大切な人たちをみんな不幸に貶めてしまったような罪悪感は軽くなっている。

堪えられずに潰れそうになって、泣いて、泣いて。

奏太が抱きしめてくれなければ、私は今後一生苦しんだかもしれない。

「たくさん泣いてごめん」

無様な泣き顔を晒すまいと決心したのに、またもや醜態を晒してしまった。

「どうして謝るの? 梨乃を慰めるのは俺の役目でしょ」

「だって、泣いてる女って面倒くさいじゃん。ごめん。今度こそもう泣かない」

また奏太にカッコイイって褒めてもらえるように、やっぱり私は強くなりたい。

甘え癖がついてしまったのだろうか。

奏太の前だと、つい涙腺が緩くなってしまう。

反省の意を込めて宣言したのに、奏太は私の決意を一刀両断した。

「ダメ。泣きたいときは泣いてよ」

「え、なんで?」

「梨乃は何でも一人で抱えようとし過ぎ。顔には出てるのに何も言ってこないから、ヤキモキする。もっと俺を頼ってよ。甘えてよ。彼氏って、そのためにいるんじゃないの?」

奏太の声が珍しく大きくなって、窓を開けた車の外に響いたのがわかった。

「そう……なのかなぁ」

好きだから。一緒にいたいから。独り占めしたいから。

私はその程度にしか考えたことがなかった。

首を傾げると、奏太は繋いでいた手を放し、シートベルトを解除して勢いよく助手席のシートとドアのアームレストに手を着いた。

いつもの穏やかな雰囲気とのギャップに、思わずドキッとする。

「それとも、元ヤンの俺にはそんな甲斐性、ない?」

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