くるまのなかで
「結果オーライですよ。清香先輩、さぽーとこーるの仕事、向いてるし」
電話で聞き取りやすい高い声。
クレームにめげない、いい意味で楽観的なメンタル。
あまりに酷いクレーマーの対応をしているときは、中学時代のアレが出てしまわないか不安になることもあるが、今のところ、そういうこともない。
「えへへ、コバリノに褒められると嬉しい」
彼女がうちに勤めるのは週に3〜4日。
下のお子さんがまだ小さいため、大体は早番だ。
うちの仕事はわりと時給がいいし、由美先輩にもうちを受けてみないかと提案しようと思ったけれど、生憎清香先輩たちの採用の時にたくさん人を入れたため、これ以上は増やせない。
それに、他のメンバーとのシフトのバランスもあるため、毎月由美先輩が生活できるだけのシフトを約束することもできない。
「由美先輩にはどんな仕事が向いてるんでしょうね」
「うーん、あの美貌を活かしてショップ店員とか?」
「あー、似合うかも」
などと話していると、休憩室の扉が開いた。
入ってきたのは枕木チーフだ。
今日私が出社する前から行われていた会議が、ようやく終わったらしい。
ぐったり疲れた顔をしている。