不良の俺とクールな後輩
鬼ごっこはしばらく続いてたけど、公園の時計が11時を過ぎたあたりで神崎先輩は急に大人しくなった。
「あ〜、さすがに眠くなってきた。」
神崎先輩は大きなあくびをしてから俺のすぐ横に座った。
神崎先輩と祐也に挟まれて俺は顔をしかめた。
「由貴、そんな嫌そうな顔すんなって。」
「わざわざ3人並んで座らなくてもいいじゃないっすか。」
「別にいいじゃないかよぉ!温かいし!」
「今春なんすけど。」
俺の言葉が気に食わなかったのか、神崎先輩は裕也から酒をひったくって一口飲んだ。
裕也の「え〜!」って声が響いてみんな笑った。
この空間は嫌いじゃない。
みんな集まって騒ぐのは純粋に楽しい。
「でもよ、珍しいじゃないか。バイクでもないのに由貴が集まりに来てるの。」
神崎先輩の声にいつの間に集まってた周りの奴らも頷いた。
「俺が引っ張ってきたんすよ!」
「まぁ俺が裕也に『由貴も連れて来い』って言ったんだけどよ。」
神崎先輩は空になった缶を裕也に返した。
裕也は軽くなって返ってきた缶を少し物足りなそうに見下ろした。
「何かあったのかよ?」
神崎先輩の声に俺は少し首を傾げた。
別に何があったってわけじゃない。
今日は1人で家にいる気分じゃなかった。
ただ、それだけ。