不良の俺とクールな後輩

「別に。今日は家に居たくない気分だったんで。」




「まぁこの集まりは自由がモットーなんだけどよ。それでも出て来る頻度が少ないんじゃないか?」




神崎先輩の珍しい落ち着いた声に、俺は顔を上げた。



そこには今まで見たことないぐらい真面目な顔をした神崎先輩がいた。




「俺達はみんな、学校で言えば出来損ないだ。勉強はまぁまぁできる奴も多いけど、集団行動って意味では壊滅的な奴らばかりだ。」




みんな顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。



もちろん俺も、その出来損ない。



だからこそこの環境が心地いいんだと思う。




「でもその出来損ないが集結して、それなりに集団行動の真似事をしてるのがこの集まりだ。

なのにこの集まりでも集団行動が出来ないなら、お前一生人と付き合っていけねぇぞ。」




「神崎先輩、ちょっと話が壮大になってませんか。」




俺がそう言うと神崎先輩は声を上げて笑った。




「確かにな!まぁそう言う俺自身、この集まりに参加してすぐの時に同じこと先輩に言われたんだけどよ。俺自身が先輩になってお前ら見てて、確かにそう思うわ。」




神崎先輩は何を考えたのか俺の頭をグリグリ撫で回した。




「お前ら見てたら、なんか弟がいっぱいいる気分だわ。まぁ気楽に行こうや!それでこそ俺達だろ。」




神崎先輩の言葉が、なんかジーンってくる気がした。




「…はい。」




俺が本当に小さい声でそう言うと、神崎先輩は笑った。




「神崎先輩がすげぇまともなこと言ってる……」




そう言って変顔をした裕也を神崎先輩が叩き、みんな笑ってまた酒を飲んだ。



俺はみんなみたいに酒も飲まないし、タバコも吸わない



それで「空気読めねぇのかよ」って言われることもあるけど、それでも俺はこの集まりが好きだった。



どんなことがあっても、俺はこの集まりに居ようとするんだと思う。






でもその「どんなこと」が、すぐ近くに来てるなんて俺は知らなかったんだ。





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