精一杯の背伸びを

精一杯の背伸びを












 佳苗さんは心配そうに私を見た。




「少し、散歩したら帰ります」




 そう笑いかけたら、安心したように頷いた。


 お互いに背を向けて歩き出す。


 彼女に背を向けた途端に、涙が溢れる。


 せっかく水分補給したばかりなのに。


 またジュースを買うことになりそうだ。


 ドキッとした。


 彼女の瞳に映る自分に。


 その幼さに。


 胸が空かれた。









 佳苗さんはきっと踵の高い靴は履けない。


 料理だってできない。


 容姿だって大したことない。


 スタイルだって。


 あまつさえ、おどおどしてるし。


 でも。


 でも仁くんが彼女を選んだ理由がわかったような気がする。


 彼の目は確かだ。




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