精一杯の背伸びを







 こうやって泣くことしかできない。


 いつか。


 それは来るのだろうか?


 彼が、佳苗さんを選んだのは正しい。


 私じゃ、彼女に勝てない。


 張り合うことさえできない。


 だから彼の隣にいるのは彼女だ。


 これから先。


 ずっと。


 彼の隣にいるのが私じゃなくても。


 私ではない誰かの隣で笑っていても。


 笑っていられるくらい。


 彼の幸せを祈っていられるくらい。


 大人になりたい。


 少しでも彼の傍にいたいのなら、そうでなければいけない。


 そのためにも、終止符を打たなければ。


 そうでなければ、前に進めない。


 諦めないことが、前に進むことだった。


 八年前のこの日がはじまりだった。


 月日は途絶えることなく流れてきた。


 そして、今。


 諦めることこそが、前に進むことに変わった。


 そのためにも自分の手で終止符を打たなければならない。






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