精一杯の背伸びを
第1章
夢のあと
あまりの眩しさで目を覚ました。
春の訪れが近くなり分厚い雲が取り払われると、太陽の光が雪に反射して、部屋の中まで容赦なく差し込んでくる。
眩しさで手を目に翳しながら、雪に反射した光は吸血鬼でなくても凶器だと思った。
ただ春の訪れと生命の活動を象徴されるような、この光ともお別れだと思うと少し名残惜しくなる。
そう。
今日、この町を出て、東京に行く。
腕に力をこめて勢い良くベッドから降りて、鏡を覗き込んだ。
さすがに寝起きはヒドいな、と半開きの目を強くつぶり、髪を軽く整える。
いくら春が近いとはいえまだ寒い。
部屋も冷えきっている。
それなのに身体中が火照って熱いのは夢のせいだ。
あの緊張で手に汗握った感触が残っている。