精一杯の背伸びを







「あの、なんか煙っぽくありません?」



 私は女性に話しかける。



「ごめんなさい。今オーブン使っていて」



 そういう問題じゃなく。


 明らかに焦げているような。


 彼女はキッチンに目を向けた。


 その途端、悲鳴を上げる。



「お、お鍋が!そうだ火を点けたまま!!」



 スリッパを響かせながらお鍋に駆け寄る。


 彼女が空けたお鍋を覗き込むと、干からびたじゃがいもが入っていた。




「あの?これは」



「に、肉じゃがだったのに。ど、どうしてかしら?」



 涙目で聞かれても困る。


 
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