恋が都合よく落ちてるわけない
「君、名前は」

「かなで」


「そっか、名字はって聞かなかった、
僕が悪かったね」

「アハハ…」と課長
「フフフ…」と私

はあああ…


髪が赤っぽい。ピアスはめてる。
オペ室のスリッパはいてる。
おまけに…

「ちぃーす」

「うぃーす」

「アザーっす」

「だりぃ」


午後からやってきた、
落合君がしゃべった言葉は、
だいたいこの4つだ。

「ちぃーすっていうのと、
うぃーすっていうのどう使い分けるの?」
と、下田課長。

「本人に聞いて下さい」

下田課長は、
落合君とコミュニケーションを
取ろうと苦戦している。



丸顔で、
いつもにこにこしている課長は、
相手の方が、先に課長の言いたいことを察してくれる。



なので、察してくれない、
落合君との会話は、
お互いに一方通行だ。


「落合君、歓迎会どう思う?」


「別にいいっす」



「大島さん、いいっすって、
やんなくてないいってこと?」


「おそらく…」


「遠慮してるのかな」


「それはないと思いますよ」
いちいち私に聞かないで下さい。


「それより、課長、落合君が来たから、
夜のシフト変えた方がいいですよね」



「ああ、そうだね…最初は大島さん、
一緒に行動してあげて下さい」


「わかりました」












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