恋が都合よく落ちてるわけない
ごほん、と岡崎さんが咳をする。

「今後は、ルールを厳密にして、
例外は認めないということを
徹底しましょう」

岡崎さんが模範的な意見を言う。


「だから、それがちゃんと
出来んのかって聞いてんの」
チャラ男も反論する。


岡崎さんの目が鋭くなる。

「落合君、君も運用の一員なんだから、
他のチームの人達にちゃんと説明して
守らせたら?」
岡崎さんが遠慮なく言う。

「何だよ、たかが協力会社のくせに」
落合君が、吐き捨てるようにいう。

これは、さすがに岡崎さんも、
怒っただろう。

が、岡崎さんは、さらっと言った。

「その…協力会社がいないと、
システムを五分も回せないくせして、
何言ってんだ?」



「その通りだね。落合君」と課長。


会議が終わって、どっと疲れた課長。
さらに追い討ちをうけた。


夕方になって、別の部署から、
落合君が帰って来ると、
早速、プリンターから紙が出ないと
呼び出しが来た。


呼び出しの依頼を伝えた課長に
罪はないはずだが、


超絶不機嫌の落合君に睨まれた。

「はああ?」

という、俺にそんな仕事させんのか?
っていう不満爆発の返事をされて、
課長は助けてという顔で私を見る。



いや、知りませんてば…
と無視しようと思ったけど、
落合君が来た理由を考えると、
見捨てるのは、
可哀想だなと思いなおした。



「プリンターくらいなら、
いいよ、私一人で行って来るから」


足元に置いてある工具セットとケーブル類、それに延長コード。
機械回りをいじるのは嫌いじゃない。


「なに、それ」
チャラ男君が呼び止める。


「何?工具だけど」

延長コードはまだ、たくさんある。
会社中で不要になったものを、集めて段ボールに入れてある。

今日は、
この子達の出番があるかも知れない。


落合君が立ち上がった。

なんだ?


「プリンターの障害でしょう?
何で工具やコードがいるの?

中を開けていじるのは、
メーカーの人だけだからね。
リース契約なの忘れてない?」



「えっ?だって、まさかのときに」
目の前に直せる障害があるのに、わざわざメーカーを呼べだと?


「あのさあ、
そんなもん持ってくから、
別な用事言いつけられるだろ?」


「はい」まさしく。


「そんで、苦労して直しても、
お前の部署、金かせがねぇし暇だから働いて当然だなって思われて、
ろくにお礼もいわれないだろ?」

よく、ご存じで。

「うっ…」


「だから、工具はダメ」


「そんなあ…」

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