~Still~
勢い良く振り向いたエレナの顔を見て、颯太は息を飲み、すぐにエレナを胸に抱いた。

「……離して」

乾ききっていないエレナの髪に頬を寄せて、颯太は切な気な声で言った。

「嫌です。好きな女性が泣いてるのに、抱き締めないなんて男じゃない」

エレナは、頬に颯太の固い胸を感じて、胸が軋んだ。

抱き締められているのに、それは幸せな行為の筈なのに、苦しい。

問い詰めないと、これ以上深入りしないと決心したのに、どうやらそれを守れそうにない。

ああ!

なんて私は弱いのだろう!

「……今日、代官山の咲希のショップに高宮理恵さんが来たわ」

「エレナさん」

「夜から打ち合わせがあるって言ってた」

「エレナさん」

颯太が首を振りながらエレナの名を呼んだ。

「半分デートみたいなものだって。彼女、颯太くんが好きなんだね」
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