~Still~
エレナがそこまで言った時、颯太が再び彼女をきつく抱き締めた。

「不安にさせて、すみませんでした」

「颯太く……」

「高宮さんとは、次の対談の打ち合わせをしただけです。海外で開かれる日本酒の品評会の密着取材を申し込まれて……。六本木の歩道で彼女といたのは、もう一人の編集者さんが会計をし終わるのを待ってたんです。
その時に彼女がよろけたのを抱き止めただけで、他の理由はありません」

「……」

「エレナさん、本当です」

身をよじって見上げると、エレナは颯太の真っ直ぐな眼差しを見つけた。

……多分、嘘じゃない。

エレナは眼を閉じて、颯太の体に身を預けた。

「ごめん」

エレナはかすれた声で呟くように言った。
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