~Still~
エレナは、少し首を振るとフワリと笑った。

……深入りはしないでおこう。

そうしたら、傷付かなくてすむ。

「私、お刺身が食べたい。それと、日本酒が飲みたいな」

颯太は頷いた。

「では、僕の行きつけの和食の店が近くにあります。
行きましょう」

颯太はそう言うと、エレナの手をガシッと握り直した。

「きゃ……!」

「すみません!痛かったですか!?」

颯太が焦ってエレナの瞳を覗き込んだ。

ああ……。

エレナは、颯太に惹かれていく自分を感じながら、大丈夫と告げた。

夜の東京の風は、エレナの心を切なく揺らした。
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