~Still~
グルグルと回る視界が煩わしく、思わず眼を閉じたとき、ふとあのスーツの男を思い出した。

『 エレナさんは今現在、僕の恋人です。失礼な発言は控えてくださいますか』

辺りを払うような華やかな雰囲気を持った、背の高い整った顔。

あれは、確か……。

数ヵ月前、雑誌『NEED』に載っていた、あいつなんじゃ……?

雑誌『NEED』とは、数ヵ月に一度の割合で発行される、実業家を特集した雑誌である。

健斗はヨロヨロと立ち上がると、コンポの隣のマガジンラックをあさった。

あった。

やっぱり。

表紙を飾るこの男こそ、まさにアイツだ。

……てことはあの、ショットバー『sou』も、麻布の日本酒バー『檜』も、あいつのものって事か。

健斗は薄い雑誌を握り締めると、捻って歪め、ゴミ箱に投げ捨てた。

それから雑誌の中の神谷颯太を睨み据えた。

何もかも、手に出来ると思うな。

覚えてろよ。
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