~Still~
エレナは、申し訳なさそうに笑った。

「ごめんなさい、鱧って私、知らなくて」

「僕も、数えるほどしか食べたことありません。では、食べてみましょう!ここの料理は最高級の味ですし、きっと美味しいと思います」

「はい、じゃあ、いただきます」

はい、と言って頷いたエレナの表情は硬く、颯太は眉を上げて口を開いた。

「もしかして、緊張しているんですか?」

「だって、見たことないから。もし食べられなかったら……残したら、申し訳ないし……」

日本人は繊細だ。

こんなに立派なお店で、最高級の料理を残すなんて、失礼に決まっている。

エレナは、日本が好きであった。

大好きな母の母国である事に加え、日本人にしかない、本能からくる細やかな心遣いを愛しているのだ。
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