午前0時の恋人契約
そして、迎えた日曜日。
よく晴れた昼間の、東京は渋谷の片隅にある大きなビルの前に私は立っていた。
30階近くはあるだろうか、どんと構えるガラス張りの大きなビルはサイト上の地図通りの位置にあることから、きっとここがそのお店なのだろう。
「えーと……お店は確か『レンタル彼氏 mi amor』、ここの25階かぁ」
勢いで来ちゃったけど……大丈夫かな。
中に入ったら最後、高額な美顔器や絵画を買うまで出られないとかないよね?大丈夫だよね?
念のため電話連絡とかしてから来るべきだったかな?あぁ、ますます不安になってきた……!!
紺色のパンプスを履いた足元は、怖気付き帰りたくなってしまう。
けど、今逃げたらまた来るのにさらに勇気が必要になるだろうし……行け!私!行くんだ!
そう深呼吸をして、エレベーターに乗ると25のボタンを押した。
ポン、と鳴った音とともに開いたドアから恐る恐る降りると、もう逃げ場はないと言わんばかりにエレベーターはドアを閉め降りて行ってしまった。
顔を上げれば、目の前の白いドアには『mi amor』と書かれたプレートが飾られている。
ここだ……。お店の人が親切な人ですように。怖かったり胡散臭かったりしませんように。
祈る気持ちでドアへ向かい歩き出そうとした、その時。ガチャッとそのドアは開かれ、中からは女性が出てきた。
それは真っ白なファンデーションに真っ赤な口紅の50代くらいの女性。
茶色い髪を大きくカールさせ、真っ赤なジャケットと真っ赤なミニスカート、そしてさらにヒョウ柄のハイヒールを履いたその姿は、まさしく『ゴージャス』。その表現が一番しっくりくると思った。
お客さん、かな?それとも……。
「だーかーらぁ!今夜来いって言ったでしょ!?」
「わっ!?」
そう考えていると、突然の女性からの大きな声にビクッとしてしまう。
見れば女性は携帯電話片手に誰かと通話しているらしく、その言葉遣いは荒々しい。