午前0時の恋人契約
それから桐子さんとお茶をしながら女同士の会話に花を咲かせ、気付けば何時間もの時間が経っていた。
すっかり打ち解けた桐子さんと手を振り別れた頃には、空は夕暮れ色。
18時半になりようやく暗くなりだそうとしている空に、日が延び始める季節なのだと感じながら私は駅前でひとり立って彼を待っていた。
待ち合わせより30分も早く来ちゃった。けど自宅に帰る時間はないし、どこかお店に入るにも混んでいるだろうし、せわしない。
そんな思いでいつも通り新宿の駅前に立っていれば、日曜日の街はいつも以上にたくさんの人が行き交っている。
道行く人を見ながらも、思い浮かべるのは彼のこと。
貴人さんは、皆にとっての最高の彼氏になりたくてレンタル彼氏をしているんだろうか。
それは優しい彼らしい理由で、とても当てはまると思った。けど、それと同時に寂しさを感じている、自分もいる。
その優しさは自分ひとりに向けられるわけじゃない。先日も感じたそのことが、より一層強く刺さる。
なんか昨日から私、変だ。嬉しいのに、苦しくて、心がぐちゃぐちゃ。
頭を抱え下を向くと、不意に視界に入る茶色い革靴は目の前で止められた。
あれ、貴人さん来たのかな。随分早い……。
そう顔を上げると、そこには貴人さん、ではなく見知らぬ男性が立っていた。