午前0時の恋人契約
「あいつ……!!」
「あ、あの、貴人さん?無理せず他のお店に……」
「上等だ!入ってやる!行くぞ!」
おそらく桐子さんの目的はこれだったのだろう。貴人さんが幽霊や怖いのが苦手と知ったうえでこのお店を紹介し、挑発するように入らせる……。
案の定、貴人さんは少し震える手で私の腕を掴みズカズカと店内へ入っていく。
「いらっしゃいませぇ〜……お客様、何名様でしょうか〜……」
「うおっ」
ところが、入って早速白装束の女性に声をかけられ、早くも彼はビクッと驚いた。
「ふ、ふたりで」
「は〜い、二名様ご案内〜……」
案内され入る店内は、薄暗い中にところどころをぼんやりと灯りがてらし、その光景はまさしくお化け屋敷。
所々に置かれたガイコツや目玉の置物、ゾンビの人形など、和洋入り混じった部分が、本気で怖がらせようとしているわけではなく、あくまでそういうテイストの居酒屋なのだと感じさせた。
……前を歩く貴人さんは、それらにも常にビクッとしているけれど。
「こちらのお席どうぞぉ〜……」
通された席は、横長いテーブルとソファのカップルシートのような席。
座ってメニューを開けば、そこには『脳みそチューチューゼリー』や『吐血風トマトハヤシライス』など、見た目もネーミングもなんとも言えないメニューがずらりと並んでいて……。
ちら、と隣を見れば、貴人さんはページをめくればめくるほど嫌な顔をした。