午前0時の恋人契約
……そんなにきつい言い方をしなくても、いいと思う。けど、下を見て歩いていた自分が悪いことも、事実だ。
言われてみれば、横にあるアパレルショップのショーウィンドウに映る自分は、以前と同じように俯いてばかり。
……ダメだ、なぁ。
貴人さんと一緒だったら、あんなにまっすぐに前を向けていたのに。ひとりになった途端、こんなにも弱い。
隣に彼がいないだけで、こんなにも。
思い出すとまた込み上げる涙に、ガラスに映った情けない顔の自分の姿が滲む。
「あら、すみれちゃん?」
その時、呼ばれた名前に振り向くと、そこには今日は真っピンクなコートに真っピンクな口紅を合わせた、桐子さんがいた。
買い物帰りなのだろうか、その手には大きな紙袋をいくつも持っている。
「また会ったわねぇ、奇遇……ってあれ?今日貴人は?今は確かデート中のはずじゃ……」
私がひとりでいることを不思議に思ったのだろう、問いかける桐子さんに何か言い訳をと思うものの、上手く言葉は出てこずに代わりに涙がポロポロとこぼれた。
「え!?すみれちゃん!?どうしたの!?」
「桐子さん……私、わたしぃ〜……」
「あらあら!取り敢えずうちのお店行って落ち着きましょ!ね!」
子供のように「うわぁぁん」と泣き出した私に、当然驚いた桐子さんは、慌ててハンカチを取り出しながら、私の肩を抱いて歩き出す。
強い香水と化粧品の匂いの中、その優しさによけいに涙は溢れ出してしまう。
もう、どうしたらいいのか分からないよ。
苦しいこの気持ち、それでも消えないこの想いは、どうしたらいい?
それらを問いかけるかのように、涙は止まることなくこぼれていく。