午前0時の恋人契約
「……はぁ……」
時刻は夜19時過ぎ。
仕事を終えた私は、今日はひとり仕事帰りに新宿の街を歩いていた。
目的は特にない。デートの予定は断ってしまった、けどそのまま大人しく自宅に帰る気持ちにもなれず……行くあてもなく、ひとりフラフラと歩いているだけだ。
あの後……散々泣いて、帰りたい気持ちに押しつぶされそうになりながらもなんとか立ち上がり、ようやくフロアに戻った頃には既に始業時間は過ぎてしまっていた。
いつも通りフロア内では皆がバタバタと動き回っており、私の遅刻など誰も咎めも、気に留めることもなかった。
自分の影の薄さが有難いと思う日が来るなんて……。
運良くというかなんというか、貴人さんは会議で一日のうちのほとんどがフロアにいなかったし、まともに顔を合わせることもなく仕事を終えて今に至っている。
……思った以上に、へこんでる。
そんな自分は、『分かってる』と言い聞かせていたつもりでも全く分かっていなかったのだと今更気付いて余計へこむ。
自分の足元の紺色のパンプスばかりを見て歩いていると、向かいから歩いてきた人とドンっと肩がぶつかった。
「きゃっ……すみませ、」
「んだよっ、下見て歩いてんじゃねーよ!邪魔だな!!」
謝ろうとしたと同時に投げつけられた大きな声。怒鳴りながらそのまま去って行ってしまう男性に、一層顔は下を向いてしまう。