午前0時の恋人契約
「勇気が出たのも、恋をしたのも、お父さんに素直に向き合えたのも……全部、貴人さんのおかげです。だから、迷惑でも好きでいさせてください」
仕事だって分かってる。分かったうえで好きでいたいなんて、迷惑でしかないかもしれない。
だけど、それでも、好きでいさせてほしい。
「片想いから、始めますから」
いつの日か、あなたが少しでもこっちを見てくれるよう、頑張るから。
えへへ、と笑った私に、その顔は少し驚いて、一層呆れたように髪をかくと、突然腕を引き体をぎゅっと抱きしめた。
突然その腕に抱かれ、ふわりと貴人さんの匂いが漂う。
「貴人、さん……?」
「バカ、本当バカ。人の気持ちも知らないで」
貴人さんの、気持ち……?
「俺は、お前が顔上げて笑っててくれれば充分だったんだよ。胸張って、恋をして、過ごしてくれればと思ってた」
耳元で響く低い声は、込み上げる気持ちを必死に抑えるような声。
「なのにこの前も今も、そうやって不意打ちでかわいいこと言うんだもんな。そりゃあ抑えられなくもなる」
『胸を張れるように』
『抑えられなくもなる』
その言い方ではまるで、仕事ではなく彼が望んでしたことのよう。どうして、だって、そんな疑問ばかりが浮かんでしまう。