午前0時の恋人契約
「この……大バカ!!」
「ひっひぃっ!!」
話をしながら食事を終え、父とも無事別れた直後。新宿の街の片隅でふたりきりになった途端、貴人さんからは怒りの声が響きわたる。
怒られるだろう、と予想はしていたけれど、予想以上の怒り方に、私は身を縮こまらせ声をあげた。
「す、すみませんでした……」
「ったく、黙っておけばよかったのに勝手なことを」
うぅ……。
呆れたようにため息をつき、首元のネクタイを少し緩める彼の正論に、言い返すこともできない。
「なんのためにレンタルしたんだか……10日間が無駄じゃねーか」
「無駄なんかじゃないです!その時間があったから、私は変われたんです」
無駄なんかじゃ、ない。
この10日間、1日1日を貴人さんが向き合ってくれたから、心は変わり前を向けた。
その思いを再度伝えるように、隣に立つ貴人さんの目を見つめると、その瞳に必死な自分の顔が映り込む。
こうして目を見つめるのも、今しかない時間だから。