午前0時の恋人契約
実際、笑顔を見ると嬉しかった。
けれど、心はその気持ちだけでは終わらなくて、心に、肌に触れるたび愛しかった。
『仮でも、彼女になれてよかったです』
そう伝えてくれた言葉が嬉しくて、衝動に負けてキスをした。
レンタル彼氏、という立ち位置を利用してキスをするなんて、反則だ。そう思いながらも、抑えはきかず。
それと同時に、気付いたんだ。
俺はただ、すみれに幸せになってほしいと思ってた。けど、本当はそうじゃない。
幸せにしたいよ、この手で。
怖がらせるかもしれない、優しくできないかもしれない。
だけど自分が、その笑顔の理由になれたらいい。俺の前でだけ、泣いて笑ってほしいこと。
……けどまさか、親の前であんなにどストレートに言うとはな。
『貴人さんが好きなの』
あの後和やかに食事会はできたものの、すみれの父親の目が俺を見るときに笑っていなかったのを覚えている。
その時の胃が痛い思いを思い出し苦笑いをこぼしながらデスクで書類をまとめていると、突然会社の電話が鳴りだした。