午前0時の恋人契約



「じゃあ、今度その彼と会わせなさい」

「へ?」



え?

ほっとしたのもつかの間。続く父からの一言に、つい間抜けな声が出る。



「あ……会わせなさいなんて、そんな、いいよ別に」

「なにを言っているんだ。大事な大事な一人娘の彼氏!どんな相手なのか、向こうは結婚についてどう考えているのかくらい、知る権利はあるだろう!」



あぁ、さらにどうしよう……!

ここにきて会うのを頑なに拒めば怪しまれる。けど、会わせようにも実在しない人を会わせるなんて、無理。

でも、今更『嘘でした』なんて言うのはもっと無理……!



「そうだな……じゃあ次、2週間近く空いてしまうが、その頃の空いてる日にでも食事会をしよう!詳しい日取りはまた連絡するから!」

「え!?あ、えーと……」

「ん?なにかダメな理由でもあるのか?」



ダメな理由でも、というかダメな理由しかないんだけど……でも、言えない……!



「う、ううん!全然!?わー、楽しみだけど緊張感しちゃうな〜……」



全く笑えていない顔で必死に明るく言う私の気持ちなど知らず、父は「よし!楽しみだ!」と豪快に笑った。



あぁ、もう、どうしよう。

背中に、嫌な汗が止まらない。



絶体絶命とは、こういうことを言うのだろうか。




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