ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
参道の小さなお店でペットボトルのお茶を二本買った。
白いビニール袋を手に提げて、なんとなくハアッと溜め息をつく。


まだ心臓ドキドキしてる。
いくらか落ち着けたと思ったけど、さっきの響さんの言葉を思い出すと、鼻の奥の方がツンとしてきてしまう。


ダメダメ、笑わないと。
響さんに心配掛けたままじゃいけない。


ビニール袋を提げる手をギュッと握り締めて、私は来たばかりの参道を響さんの元に向かう。
そうしながらなんとなく薄暗い空に顔を上げて、雨が降って来そうだな、とチラッと思った。


大木の影から、響さんがまだ本堂の前に佇んでいるのを見つけた。
駆け寄ろうと踏み出した足は、すぐにピタッと止まってしまう。
私は、遠目から見る響さんに見惚れてしまった。


白いVネックのシャツ。ブラウンのロングカーディガン。ダークブラウンのスリムパンツ。
開いたデコルテにはクロスのチョーカー。
なんて言うかすごく雰囲気あるのに、特にセットしていない無造作な髪が、実年齢よりも若く見せる。


色気と幼さが絶妙なラインでアンバランスで、元々整ったルックスを際立たせる。


なんてカッコいいんだろう……。


自分の立場も忘れて、私は響さんに完全に見入っていた。


響さんに憧れて近付く女性の気持ちがわかる。
しかも見た目だけじゃなく有能な銀行員だなんて知ったら、誰だって……。


ぼんやりと他人のように見つめてから、私は無意識に自分の姿を見下ろした。
< 153 / 224 >

この作品をシェア

pagetop