ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
闇雲に走ったおかげで、ここがどこだかよくわからない。
あれからだいぶ時間も経ってしまったし、さっきのお寺に戻ったところで、響さんがいるかどうか。


急に大きな不安に襲われて、私は濡れてずっしり重く感じるバッグを漁った。


携帯、携帯……と、震える指先で起動させようとした。
その時。


「……萌!」


雨の飛沫で白く煙った道路の先から、バシャバシャと水溜りを駆ける足音が聞こえた。
目を凝らしてその方向を向くと、次の瞬間。
私と同じようにずぶ濡れの響さんがバス停に駆け込んで来た。


「……この、バカ!」


まるで犬のように頭を振って豪快に雨の雫を払ってから、響さんは私にそう怒鳴りつけた。
咄嗟にビクッと身体を震わせて、恐る恐る顔を上げる。


「何一人でウロウロしてんだ。しかも全然電話出ないし。おかげで捜し回る羽目になっただろうがっ!」

「ご、ごめんなさいっ!」


亀みたいに首を竦めて謝った。


「ごめんなさい! ……ごめんなさい!」


また心配掛けてしまった。
また怒らせてしまった。
私ってどうしていつもこうなんだろう。


あまりに情けなくて、じわっと涙が込み上げて来た。
それを必死に歯を食いしばって堪えると、響さんはバツが悪そうに私から目を逸らして、クシャッと髪を掻き上げた。
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