ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
萌っ……!と、響さんの声が私を追い掛けて来る。


庭園に逃げ込んだはいいけど、廊下から見渡せる広さの中じゃ、どうやっても隠れ切れない。
葉の落ちた銀杏の大木に手をついて、私はがっくりと頭を垂れた。


肩で息をする私に、サクッと落ち葉を踏み締める音が近付いて来る。
それを感じて、私はただ身体を強張らせた。


「……萌」


感情を抑えた低い声が、背後から掛けられる。
それを聞いて更に身体に力を込めた。
俯いたままで、ごめんなさい、と謝った。


「俺は別にいいけど。……座談会の方はあれでいいのか?」


こんな状況でも冷静で理性的な響さんを、ものすごく遠く感じる。


「……きっと、怒られます」

「だろうな」


私の放った情けない一言に、響さんは軽く同意した。


「……知ってたのか、俺と中谷のこと」


短くそう問われて、私は一瞬躊躇った後で、黙って首を縦に振った。


「……清水か」


溜め息が混じる響さんの声に、私は銀杏の木に置いた手をギュッと握り締めた。


「もう三年も前に終わったことだ。お前が首突っ込むような話じゃない」


素っ気ない声が、却って心を逆撫でする。
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