ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
あまりの驚きで椅子ごと後ずさった私の声とほぼ同時に、ちょっと離れた島から声が上がった。
総務部の女性が響さんに気付いて、にわかに色めき立っているのがわかる。
「ど、どうしてここに!? お仕事は?」
あまりの焦りに、声がどもってひっくり返った。
「もちろん終わらせたに決まってるだろ。お前は? 見た感じ終わってそうだけど」
響さんは顔色も変えずにシレッとそう言い放った。
そして、私の挙動に怪しげな視線を向けてくる。
「大丈夫そうだな。……ちょっと来い」
私のデスク周りと電源の落ちたパソコンをチラッと見やって、響さんは有無を言わせない態度で私の腕をグッと掴み上げた。
キャアッと小さな悲鳴のような声が耳に届いた。
……ああ、総務部さんが騒いでる。
「響さんっ、あのっ!」
コンパスの差を考慮してくれない響さんに、ほとんど引き摺られるように立ち上がった。
私の手からわずかな抵抗を感じ取ったのか、響さんは不機嫌そうに振り返る。
「なんだよ、うるさいな」
「だ、だって、みんな見てます!」
視線を気にしながら口籠ると、響さんは深い溜め息をついた。
「お前が騒ぐからだろ。いいから、大人しくついて来い」
素っ気なく言い捨てて、響さんは私の腕を掴む手に力を込めた。
「そんなっ!…… 無理です!」
「なんでっ!?」
「だって、……響さん怖いっ!」
そう必死に叫んだ時には、誰もいない廊下に連れ出されていた。
総務部の女性が響さんに気付いて、にわかに色めき立っているのがわかる。
「ど、どうしてここに!? お仕事は?」
あまりの焦りに、声がどもってひっくり返った。
「もちろん終わらせたに決まってるだろ。お前は? 見た感じ終わってそうだけど」
響さんは顔色も変えずにシレッとそう言い放った。
そして、私の挙動に怪しげな視線を向けてくる。
「大丈夫そうだな。……ちょっと来い」
私のデスク周りと電源の落ちたパソコンをチラッと見やって、響さんは有無を言わせない態度で私の腕をグッと掴み上げた。
キャアッと小さな悲鳴のような声が耳に届いた。
……ああ、総務部さんが騒いでる。
「響さんっ、あのっ!」
コンパスの差を考慮してくれない響さんに、ほとんど引き摺られるように立ち上がった。
私の手からわずかな抵抗を感じ取ったのか、響さんは不機嫌そうに振り返る。
「なんだよ、うるさいな」
「だ、だって、みんな見てます!」
視線を気にしながら口籠ると、響さんは深い溜め息をついた。
「お前が騒ぐからだろ。いいから、大人しくついて来い」
素っ気なく言い捨てて、響さんは私の腕を掴む手に力を込めた。
「そんなっ!…… 無理です!」
「なんでっ!?」
「だって、……響さん怖いっ!」
そう必死に叫んだ時には、誰もいない廊下に連れ出されていた。