ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
私の頬の横に伸びた響さんの腕。
ドアにつく手が、ギュッと握り締められたのを横目で見た。


「卑怯なプロポーズして、萌を縛り付けた。
だからこそ、結婚してからでもいいから、俺はちゃんと萌と恋したかった。
一生俺としか恋できなくても、絶対後悔なんかさせない。俺はそう誓って、これからの萌を大切にしたくて……」


響さんはそう言いながら俯いて、握った拳を震わせた。


響さんの言葉が、頭の中でグルグル回っていた。
ゆっくりと……はっきりした鼓動を伴って、私の胸に染み入って来る。


『萌とちゃんと恋したかった』


響さんの声が、優しく心に広がって行く。


「結婚式のセオリー通りの誓いはいらない。
俺と萌の誓いなんだから、他人に見せる必要はない。証人もいらない。
俺が萌の心も全部手に入れたら、その時……その時が誓いの時だって決めて、あの時敢えて萌にキスしなかったんだ」


その言葉に、大きく心が揺れた。


「あ……」


両手で口を覆って、零れ出る言葉を必死に飲み込んだ。


恋もしないままで結婚した。
響さんがどんなに私を大切に守ってくれても、それは愛にはならない。
だから、誓えないんだって思ってた。


壊れそうにドキドキと加速して行く心臓を気にしながら、目を閉じて待った唇は頬に軽く触れただけだった。


私は寂しさでいっぱいになったけど、あの穏やかなキスは、響さんにとって私との始まりだった。


誤魔化された訳じゃなかったんだ……。
< 186 / 224 >

この作品をシェア

pagetop