ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
私の手の中で食器が小さくぶつかって、カチャカチャと硬質な音を立てる。
汚れの落ちた食器がキュッと鳴くのを聞きながら、私はぼんやり手元を見つめて、そしていつしか焦点が定まらなくなって行く。


「ただいま~」


玄関のドアが開く音と同時に、響さんの声が耳に届いた。
ハッと目を瞬かせて顔を上げた。


リビングのドアが開いて、響さんがコートを脱ぎながら入って来る。
フウッと息をつくその姿に。


「お帰りなさい。お疲れ様でした」


そう声を掛けると、コートをハンガーに掛けながら、ん、と短く響さんが答えてくれた。


「萌も、御苦労様」

「私は全然。楽しかったし」


そう笑い掛けてから、食器を洗う手元に視線を落とした。


「あ、響さん。お風呂湧いてるから、先にどうぞ」


手を動かしながらそう呟くと、ああ、と短い返事が返って来る。
それを聞きながら私は洗い物を続けて……。


「……?」


視線を感じて、顔を上げた。
カウンター越しに、響さんが私をジッと見つめている。


「……あの、響さん?」


蛇口を捻って水を止めてから、首を傾げる。
響さんはカウンターに頬杖をついた。
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