ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「誤魔化すなんて、ひび……倉西さんはそんなこと」

「俺、結構前の方の席にいたから、気付いちゃったんだよね。だから、沢木さんが倉西に合わせて嘘つく必要ないよ」


余裕綽綽な様子で言葉の先に回り込まれて、私はただグッと言葉に詰まった。


あの一瞬の『嘘』が自分の中に蘇って来る。
どうして、って思いながら、じんわりと寂しい気持ちになったことを思い出してしまう。


「……だったら……どうだって言うんですか。そんなの、清水さんに何の関係があるんですか」


虚勢を張りながら俯いてそう抗議する私を、清水さんは小さくフフッと笑った。
そして、私に一歩足を踏み出して来る。
背中が壁にぶつかってそれ以上は後ずされない。
自然と超近距離から清水さんを見上げるしか出来なくなった。


「このフロアでもいろいろ噂されてるみたいだけど……。営業部のフロアでは女子達がどんな風に騒いでるか知ってる?」

「え?」


ついさっきまでまさにそれを気にしていた。
なんてタイミングだ、と思いながら、知りたいと思う気持ちを抑えられない。


つい問い掛けるような反応を返した私に、清水さんは満足そうに微笑んだ。


「倉西の結婚は、偽装結婚だって」


言い含めるようにゆっくり告げられて、一瞬顔が強張った。


「な、何が言いたいんですか」


必死に冷静を保ってそう聞き返すと、清水さんはゆっくり私の反応を観察した後で、一歩後ろに身体を引いた。
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