ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
その夜、響さんはいつもよりだいぶ早く帰って来た。


玄関のドアが開いたのは、まだ二十時半。
私は夕食の途中で、リビングに入ってきた響さんを見て目を丸くした。


ただいま、と短く言うだけで、響さんはネクタイを緩めながら自分の寝室に向かっていく。


「お帰りなさい。あの……響さん、今日は早いですね。お食事は……?」

「俺のことは気にしなくていいって言ったろ」


立ち上がって後を追おうとすると、響さんは振り返らずにそう言った。


これ以上は踏み込むな、のラインかな。


私は肩を竦めながらもう一度席に戻る。
そして再びフォークを手に取ると、モソモソと食事を再開する。
食器の音に気付いたのか、ドアノブに手を掛けたまま、響さんは私を振り返った。


「萌」


呼ばれて顔を上げると、その視線をなんとなく手元に感じた。
響さんの目元から、視線の目的地を目測して、


「……あ」


私はフォークをテーブルに置いて、ポンと手を叩いた。


「響さん、食事まだですか? 簡単な物で良ければ、私、作ります」


そう言って腰を浮かしかけると、


「いい」


短い声と手振りで制された。


「……そうですか?」


またしてもスゴスゴと腰を下ろすと、今度は顔に視線を感じる。
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