ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
嘘っ。本当に忙しい。


しかも、こんな一から企画を進行するのが初めてで、要領もわからないし、印刷会社の担当者もわからない。


半泣きになりながらも、香川主任に相談しながらとにかく着手した。


質問原稿を篠沢課長にチェックしてもらって、たくさんダメ出しをもらってへこみながらも、顔だけはしゃんと前に向けるようにした。


余計なことを考えてる余裕なんかない。
日々仕事に追われ、眠っている間でも仕事の夢を見るくらい。


おかげで、響さんの顔を見る時間すらないままで、私の記憶からお風呂場事件は徐々に風化していった。


元々、ほとんどルームシェアみたいなもの。
帰って来て私が部屋に籠って仕事をしていれば、響さんとはほとんど接点すらない。


朝もなんとなく寝過ごしがちになって、響さんが家を出た後にリビングに出る。
そして、一人でコーヒーを飲んで、急いで支度して部屋を飛び出す。


そんな状況だったから。


響さんのこととか、中谷さんのこととか。
いつもなら考え込んでしまうことも全部忘れていられた。


生まれて初めて、仕事のことだけで頭の中がいっぱいになった。
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