続・エレベーター
男がわたしをエレベーターに誘導する。


誘われるまま、わたしはエレベーターの前に立つ。


開かれたその扉の底から、ついさっき見た自転車置場が見える。


『…ふ…うぅ…っ』


枯れたはずの涙がまた溢れてきて、遥か下の地面がゆらりと揺れた。


さっき、あの場所で、わたしは確かに願った一


『一生懸命生きたい』、と…。


戻りたい一


あの場所へ…


戻りたい一


あの時の自分へ一


わたしはエレベーターの底へ向かって、一歩踏み出した。





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