アイザワさんとアイザワさん

その言葉を聞いて、やっぱり馨さんは優しい人だと思った。

弱いのは私だったのに、まだ傷つけないようにこうして庇ってくれている。


……もう、馨さんを苦しめるのはやめよう。


私は相澤が言ってくれたように彼を『利用』することにした。


「生方さん。……私ね、この人と付き合ってるの。今のお店の店長なの。」


これ以上は嘘を並べることができなかったけど、だから安心してしあわせになってね、と祈るように心の中で声をかけた。


「そうか。良かったな。」


馨さんもそれだけ言うと、相澤に会釈をしてこの場を去って行った。

ようやく、終わったんだ……お互いの気持ちの全部を話し合った訳じゃないけど、でも、向き合って区切りを付けることができたんだ……。


それだけで充分だった。


黒瀬さんは、私と馨さんの雰囲気が思ったよりも重苦しかったことに驚いたようだ。
「それじゃ」とだけ言うと逃げるように居なくなってしまった。


残された私達は、しばらく黙って立っていたけど、相澤は私が立っているのもやっとだと気づいてくれたらしい。


「顔色……真っ青だな。」


私の顔をのぞきこんでそう言うと、休憩スペースまで連れて行ってくれた。

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