アイザワさんとアイザワさん

急に車内の温度が冷えきったように感じた。
スーツの背中を冷や汗が伝っていく。

ずっと抱いていた疑問は、だんだんと確信へと変わっていくようだった。


相澤 樹は、私のことを……知っている。
たぶん、ずっと前から。


運転している相澤の横顔をそっと見る。
この人は、私の記憶の箱の蓋を開く鍵を持っている人かもしれない。


相澤は、私のことをどう思っているんだろう。正直、箱が開くのも、箱の中身と向き合うのも怖い。


これ以上、相澤の気持ちを知ろうとして踏み込むのは、まずい……
そう思っていても、さっき守ってもらって嬉しかった気持ちはやっぱり伝えたいと思った。
馨さんと向きあえたのは、相澤のおかげだったから。


「さっきは……ありがとうございました。」


私が礼を言うと、相澤は信じられないといった顔をした。

……何でありがとうなんて言うんだ?と言われたような気がした。

勘のいい人だから、私が抱いている疑問にはとっくに気づいているはずだ。
だけど相澤は口には出さなかった。


口に出してしまったら……私達の関係は……どうなってしまうんだろう。

 
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