アイザワさんとアイザワさん

そのまま、車内では一言も会話のないまま、私のアパートへと着いた。

気分はだいぶ良くなっていた。ずっと横になっていた身体を起こそうとしたら、相澤が身体を支えてくれた。そのままアパートまで歩き出す。


「7月の時とは、逆ですね」と言うと、
「お前、あの時、よく俺を支えながら事務所まで歩けたよな。」と笑いながら言われた。


いつもの相澤の口調にほっとしながら、ついつい部屋の中まで肩を借りてしまっていた。


「すみません……」


今日は1日いっぱいエリア会議に費やす予定だったので、明日は休みになっていた。


ベッドに座りながら、このまま休めば明日までにはだいぶ良くなるだろう。そう思っていた時だった。


「相沢。」

ふいに、声をかけられた。その真剣な表情に、心臓がドキッと跳ねた。


「ようやく分かったよ。お前は目の前に、手が届くとこに『恋』が近づくのが怖いんだろ?深い関係になることを恐れてるから『イケメン好き』なんて、適当な理由を付けて逃げてるんだ」


「…生方さんのことを忘れられないからか?」


やっぱり馨さんとの事を相澤は知っていた……
はっきりと口に出されて動揺を押さえることができず、その質問に私は何も答えを返すことができなかった。


馨さんを忘れられない?……やっと向き合ったばかりなのに、そんなことはまだ考えられない。

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