アイザワさんとアイザワさん

「来月は……初ちゃんは来るかい?」


源ちゃんはいつも聞いてくれるけど、私は無言で首を横に振る。


そんな私の心を源ちゃんは分かってくれて、いつも無理にとは言わずに私が来れない代わりにここへ来てくれている。


「源ちゃん、いつもごめんね。」と私が言うと、「『ごめん』じゃなくて、『ありがとう』と言ってくれや。」と言われた。


「うん。……ありがと。」


源ちゃんはいつも優しい。
最近は私が悩んだり落ち込んだりしていることがばれているのか、よくコンビニに顔を出してくれている。


茜さんあたりから何か聞いてるのかもしれない。


「ところで、初ちゃん。……樹ちゃんと、ちゃんと話はできてるのかい?」


……やっぱり聞いてるみたい。


この複雑な感情をどう整理していいか……もう分からなくなっていた私は、ただ首を横に振ることしか出来なかった。


「そうかい。……樹ちゃん、最近いい顔してたのになぁ。最初、コンビニに来た時は笑っててもなんだか冷たい顔してただろ?」

「最近じゃ、ほんとに『笑ってる』ような気がしてたんだけどなぁ……。」


そう言った後で源ちゃんはこう言った。


「樹ちゃんの笑顔を見てるとさ、何だか前から知ってる人に会ってる気がしてくるんだよ。……何でだろうなぁ。」


源ちゃんも私と同じことを思っていたようだった。

心が軋む。箱が音を立てている。


……蓋がゆるんできている。そう思った。


家に戻ってから、そんな憂鬱な気持ちで口にしたボジョレーは、なんだか渋くてちっとも酔えなかった。



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