アイザワさんとアイザワさん

相澤から「もう近くにいるのはやめる」と言われた3日後の12月21日。


私は相澤オーナーからかかってきた電話で、朝日勤の後に事務所に呼び出されていた。


「他の人には言わないでね」と言われて。


今日は相澤は日夕勤だし、何となくこんな電話がかかってくることは予想していた。


事務所に着くと、相澤オーナーの他に私を出迎えてくれた人がいた。


少し長めの髪を後ろに流し、細身のスーツに身を包んだその人は、私に向かってにこやかに笑いかけた。


「初花ちゃん。久しぶりだね。」


……これは予想していなかった。

何か聞いたのかな。……聞いたんだろうな。


「そう構えないでよ。」


その人は笑いながら言った。



私は動揺しながらも、挨拶を返した。


「若先生……お久しぶりです。」


< 164 / 344 >

この作品をシェア

pagetop