アイザワさんとアイザワさん

「相沢さん。源さんのこと聞いたよ。いろいろと大変だったね。よく対応してくれたみたいで、大事にはならなかったみたいだね。ほんと、お疲れ様。」


相澤オーナーは源ちゃんの話をした後で、

「それとね……樹が他店に移動したいって言ってきたんだよね。こっちも急に言われたから驚いたんだけど……何か聞いてない?」


そう言って、探るように曖昧な質問をしてきた。


はっきり言えばいいのに。
『何かあったでしょ?』って。


……まぁ、私からは言わないけど。


「この前、聞きました。年が明けたらすぐに移動できるようにオーナーに頼むって……言ってました。」


過去のことを聞き出して、傷つけてしまったから。そんなことは言えないから、それだけを答えた。


部屋に一気に沈黙が広がる。


「ちょっと、龍叔父さんストップ。そんな聞き方したらだめだよ。初花ちゃんが怖がってるでしょ?ただでさえそんな格好してるんだから。」


その空気を察して、若先生がやんわりと口を挟んだ。口調は穏やかだけど、相澤オーナーに向ける視線は真剣なものだった。


やがて、私ににこりと笑いかけてこう言った。


「ねぇ、初花ちゃん。ドライブ行かない?」


「えっ……??」


「怖いおじさんに睨まれたら何にも話せないでしょ?だったら、俺とデートしよ。」


「それとも初花ちゃんから見たら俺もおっさんかなぁ?」


そんな風に冗談めかして言うから思わず笑ってしまって、何となく了解した形になってしまった。
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