アイザワさんとアイザワさん
「玲ってば、すっごくおっぱい飲むのよー。だからむっちむちになっちゃった。」
そう言って微笑んだ鞠枝さんは、もう立派な『母親』だった。そのしあわせそうな笑顔は今の私には眩しくて……
でも、鞠枝さんの腕の中にいるこの大きくて温かな存在を前にすると、私の抱えてる葛藤なんてとても小さいものなんじゃないかと思えてきた。
私は一つ、深呼吸をして姿勢を正してから、鞠枝さんにこの2ヵ月の間に起こったことを全て話した。
***
「やっぱり相澤さんは初花ちゃんと昔からの知り合いだったんだね……でも意外だった。相澤さんがお医者さんだったなんて。」
私はただ無言でうなずいた。
「で、……初花ちゃんはどうしたいの?このままだったら、相澤さんは初花ちゃんから離れて行っちゃうんだよ。」
それは……分かってる。でも、私にはひき止める言葉も浮かばないし、どうしたらいいのかも分からなくて悩んでいる。
その気持ちを分かっているかのように、鞠枝さんはこんな話を始めた。
「初花ちゃんは『家族』を失ったから、大切にしているものが形を変えていくのが怖いんだよ。」
……でもね、と鞠枝さんは私を諭すように、こう言葉を続けた。
「『家族』はね、年数を重ねると自然と形を変えていくものなの。そばにずっといる人もいるし、居なくなってしまう人もいるし、離れる人もいる。心ごと……離れてしまう人もいるわ。」
初花ちゃんなら分かるでしょ?と言われた。
確かに私は家を追い出された時、『母親』と心も離れてしまったと感じた。