アイザワさんとアイザワさん
アパートに着き、部屋に入ろうとした瞬間に、それまで優しく繋がれていた手にギュッと力が入った。
えっ?と思って相澤のほうを見ると、私の手を強く握ったまま、ぐっと身体を自分のほうに引き寄せて……私はドアを背にして頬にキスをされた。
まるで、初めてキスをしたあの時みたいに。
今回は外じゃなくて、部屋に入ってからのキスだったけど。
「嫌なら、逃げろよ。」
あの時と同じように相澤が聞いてきた。
もう嫌じゃないって分かってるくせに、意地悪な人だ。
「逃げません。……どうせ逃がしてくれる気なんてないですよね。」
そう言って相澤のほうを見てふふっ、と微笑むと相澤は同じように笑顔を返してくれた。
それは微笑み……ではなくて唇の端をくっと持ち上げて笑う、色気を感じさせる笑みだった。
それから相澤は両手で私の頬にそっと触れた。その手はゆっくりと後ろに滑っていき、ひとまとめにしていた髪を優しくほどいていく。
そのまま長い指を髪の毛の間に差し込みながら頭の後ろに手を回していき、私の口唇を下からぐっと持ち上げるようなキスをした。
やっぱり同じようにキスしてる……そう思ったけど、あの日とは気持ちは少し違っていた。
前は戸惑いばかりで受け入れられなかったキスを……ドアを背にした瞬間に私は期待してしまっていたから。
その気持ちを伝えるように、少しずつ自分からも唇を開いてキスを受け入れていく。
そのままキスは互いの隙間を埋めるように、深い深いものへと変わっていった。