アイザワさんとアイザワさん

「あの時はどうしてここに来ようと思ったのか自分でも分からなかったんだ。場所は……親父から聞いた。俺はずっと翠さんに向かって『許してください』と言い続けていたよ。」


「5年前のことを謝っていたんですか?」


「あの時はそう思ってた。でも、たぶん俺は翠さんに初花のことをまた好きになってしまったことを謝りたかったんだと思う。」


「初花を傷つけたのに……心の箱を開いてまた傷つけてしまうかもしれない。そう思うのに止められない気持ちを誰かに言いたかった。聞いて欲しかったんだ。」


でも、二人でこうして一緒に来ることができたのは、相澤が私に心の箱を開くきっかけをくれたからだ。


「私は、一度も傷ついたなんて思ってませんよ。私……命日におばあちゃんのところに来たのは、はじめてなんです。一緒に来れてよかったです。」


ありがとう、という気持ちを込めて繋いだ手に少しだけ力を入れた。

それでも、優しい彼は私の心を傷つけてしまったと思う気持ちをなかなか忘れることはできないのだろう。


それでも少しずつお互いの気持ちをこうして話し合っていけば、癒える傷もあるはずだ。


私達は、ずっと一緒にいるんだから。
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