アイザワさんとアイザワさん

「そっか……」


残念そうに言ったその声を聞いて、チクリと胸が痛んだ。


気になるんだったらちゃんと聞かないとだめよ。茜さんにそう言われたばっかりなのに、私は自分の心を優先して逃げた。そんな自分が嫌になった。


何となく話も続かず、そのまま電話を終えた。


私の胸に渦巻いているこの黒い感情の正体に、私はもう気がついている。


これは、彼に会えないことへの不満だ。


そして……嫉妬だ。


私は、さっきの女(ひと)に嫉妬しているんだ……



今まで感じていた『嫉妬』なんて比べ物にならない、黒い、黒い感情だった。


ただ女の人と一緒にいるだけだったらこんなに不安な気持ちにはならなかった。


直接聞いてみる気になれなかったのは……その人と一緒にいた時の彼の表情が、とても優しげなものだったからだ。


心を許した人にしか見せないような、穏やかで優しいあの表情を見てしまった時に……私は一気に黒い感情に呑み込まれてしまった。



そんな顔、他の女(ひと)に見せないで。


電話をしながらも、心の中ではその言葉ばかりを繰り返していた。
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